「お前は俺がいない間にいつも勝手なことをする」
と土方を叱る近藤。
「厳しくしなければ隊がバラバラになる」
と言う土方と
「厳しくしては皆がついて来ない」
という見解の近藤。
これは、どちらの場合も言えることだろう。
組織の性格、環境因、メンバーのキャラクター、トップのキャラクターなどによって変わってくる。
原則を単純に当てはめてはダメで、実際は状況を見てどういう方針でいくか臨機応変に対処しなくてはならない。
野心を抱きながら参加した伊東甲子太郎(谷原章介)。
自分で組織を作らず新選組に入るとは、何でこんなまわりくどいことをするんだろう。
自分の名前を上げることの他に、新選組を潰そうという野心もあるのだろうか。
新選組屯所移転を話し合う会議は、メンバーの人間関係が垣間見られて面白かった。
席の順番が、新入りの伊東甲子太郎が山南の次となっており、一方、武田観柳斎(八嶋智人)が西(画面左)の末席(東の末席は原田左之介(山本太郎))に控えていたのが面白かった。
ここは武田の意見
「こんな大事なことを近藤局長不在時に話し合うのはいかがなものか」
に賛成したい。
やはり新選組は、近藤を外した土方中心の運営になってきている。
「近藤局長には一任されている。腰巾着は黙ってろ」
と一刀両断の土方。
「それはちょっとひどい。私を愚弄することは近藤局長を愚弄するも同じことですぞ」
と扇子で土方を指差す武田観柳斎。この場はそのまま収まったが、内心観柳斎に快哉を感じた。
沖田と井上源三郎(小林隆)は例外として、土方は、隊士が自分を介さずに直接近藤局長と結びつくのが気に入らないようである。
それにしても、島田魁(照英)は、土方派に寝返ったのか?
永倉新八(山口智充)が連れて来た島田。永倉の建白書騒動の時も永倉の片腕として働いていた。
しかし今回、新選組屯所の西本願寺移転案を発表。移転案に反対を表明した永倉と結果的に袂を分かつことになった。三国志でいう関羽と周倉のような関係だと思っていたのだが……。
あと、屯所の庭で訓練していた隊士同士が喧嘩を始めるのだが、その一方が島田で、それを見ていた永倉が
「芹沢さん達を思い出した。同じことを繰り返している」
と山南に言うのは、永倉と島田の決裂か……と思ったのだが、後で思い返すと、島田ではなく松原忠司(甲本雅裕)ではなかったかとも思う。どちらも大きくて強そうで元気だ。
寺田屋の坂本龍馬(江口洋介)を訪ねた山南。龍馬は誰が側にいても安定感を感じさせる。山南も、新選組より龍馬と一緒にいる方が安心できるのではないだろうか。
しかし今回は、勝海舟(野田秀樹)が幕府に左遷されたということで、龍馬は投げやりである。この龍馬の態度が山南にどんな影響を与えたのだろうか。
「この国は、考え方や理想ではなく人と人とのつながりで動いていくのではないかと思います」
と龍馬に言う山南。
確かに、今の日本でも、そんな傾向がある。
「だからこそ、変幻自在でこだわりのない坂本さんのような人が必要なのです」
これも、今の日本に当てはまる。
それにしても、坂本龍馬という人物は面白い。脇役で出てきているのに、陰の主役となっているではないか。
新選組を応援するコラムで書くのも何だが、今の時代、旧体制維持にこだわり、反対派を内外で粛清した新選組より、坂本龍馬に学ぶことが必要ではないだろうか。
新選組よりも坂本龍馬について知りたくなってきたが、このドラマは面白いので、最後まで応援していくことにする。
いとまを欲しい、と土方と沖田に願い出る山南。土方は許可しない。
これは、メンタルヘルスの観点から見ると、うつ状態だとか、燃え尽き症候群とかいう状態ではないだろうか。
新選組のために一生懸命やってきたのに、気が付くと左遷され、満足感がなく、一体今まで何をしてきたのだろう、という状態。
現代のサラリーマンにもよくある状況である。
こんな場合、必要なのはやはり「休むこと」だとされている。
決して、励ましたり脅したりして働かせ続けてはいけない。
だから休みたい、と願い出た山南は、正しかったのである。
それを許可しない土方は、メンタルヘルスの観点から見ると、理解のない上司である。
結核なのに安静にしていない沖田といい、過酷な組織である。
しかし山南は、なぜ近藤不在時に土方に願い出たのか。近藤局長に直接願い出ていれば、許可されたかもしれないのに。ここが伊東甲子太郎の言う「詰めの甘さ」か。
山南退席後、沖田との会話で、土方は、伊東と理論で伍していくには山南が必要、と告白する。
そんなに山南が必要なら、組織系統から山南を外すという左遷人事を行うな!
ということである。
いや、あの組織図作成時には伊東がいなかったので不要だったが、今は伊東が加わったので必要になった、というのなら、何たるご都合主義。
こんな人が上司なら、ストレスに悩む部下が増えるだろう。
会津候松平容保(筒井道隆)や見廻組佐々木只三郎(伊原剛志)の前で議論をする近藤。
最近は主導権を土方に奪われて流されているような感のある近藤だが、この場面では久しぶりに、番組初期の将来を模索してギラギラしていた頃を思い出させてくれた。
そしてその夜、山南は脱走する。
翌朝、騒然とする幹部連。
「山南さんが最近思い悩んでいたことは確かです」
とは井上源さん。
悩んでいたのを知りながら、見ていただけなのか。
乗り物を使わず、歩いているところに詰めの甘さがある山南。
沖田が追っ手に指名されたのはなぜか?
来週が見逃せない。