(ネタばらし注意!)
海野十三描く帆村荘六探偵譚。
冬の寒い日、ネオン横丁の中のカフェ・アルゴンの主人・虫尾兵作が屋根裏からピストルで撃ち殺される。偶然通りかかった帆村荘六が捜査に協力。帆村が疑った人物にはアリバイがあった……。
密室トリック+アリバイ崩しというところか。
“ネオン横丁”という言葉の響きが郷愁を誘う。作中の描写も、なかなかいい。藤山一郎の『東京ラプソディ』が浮かんでくる。
殺されたのはカフェ・アルゴンの主人・虫尾兵作で、虫尾はカフェ・オソメの主人・女坂染吉と非常に仲が悪かった。
カフェ・アルゴンだとかカフェ・オソメという店名も変だが、まあこれは店の名だから良しとしよう。
しかし、虫尾だとか女坂だとかいう姓は、ちょっと聞き慣れない姓である。このような姓の人物が出てくるだけでももう、戦前の探偵小説という雰囲気がする。この小説の執筆当時は普通に存在した姓だったのだろうか?
検索してみると、虫尾とか女坂という地名はあるみたいだが(円地文子の『女坂』という小説もある)。
そもそも海野十三を始め、江戸川乱歩だとか小栗虫太郎だとか夢野久作だとか、戦前の探偵小説の大御所は名前からして大家の貫禄十分である。
(以下、ネタばれ注意!!)
犯人は殺人契約書を羽織の襟の中に隠し、縫い付け、それを質屋に入れ、質札はカフェ・アルゴンの女給・ゆかりに預けていた。しかしゆかりはその質札を紛失し、二人が争っているところを帆村は偶然目撃する。
犯人はその場からすぐに質屋に駆けていき、羽織を出そうとするが、帆村が先回りしてうけだして契約書を発見しており、御用となる。
それにしても、犯人自身も急いで質屋に向かったのである。それなのに、それまで契約書入りの羽織を質屋に預けているなんて知りもしなかった帆村が先回りして質屋に着き、質札も委任状もないのに他人の預けた物をうけだして、しかも隠されていた契約書を発見しているとは……。
帆村は余程足が速かったに違いない!それとも帆村はワープしたのだろうか!?
確かに帆村は初めからこの犯人を疑い、トリックも見破っていた。だから偶然二人が質屋のことで争っているのを発見したとき、ピンときたのかもしれない。この近くに質屋が1軒しかないのだったら行く場所は決まっているし、素人探偵として有名な帆村のことだから、犯罪捜査という名目で顔パスで他人の預けた物をうけだすことができたのかもしれない。
水の上を悠々と泳いでいる水鳥も、水中の足は慌ただしく動いているらしい。
犯人に先回りして余裕で待ち伏せしている帆村探偵も、推理力はもちろんのこと、健脚と肺活量が必要なのである。
『ネオン横丁殺人事件』 海野十三・作
第1回 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0119001.html から
弟17回 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0119017.html まで
青空文庫 図書カード:No.1236 ネオン横丁殺人事件
http://www.aozora.gr.jp/cards/000160/card1236.html
海野十三 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E9%87%8E%E5%8D%81%E4%B8%89
帆村荘六 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%86%E6%9D%91%E8%8D%98%E5%85%AD
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