OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

『三銃士』について思うこと

 アレクサンドル・デュマ『三銃士』を再読しました。
 さすがに完訳版で読む余裕がないので、手っ取り早くヤングアダルト向けの抄訳版で。
 前回、小学館・少年少女世界の名作文学(全50巻)版で読んだのですが、原作が長いだけに、どこを取捨選択するかで違いがあり、少々違った印象を受けました。
 読書好きならば、複数の抄訳版を読み比べた後に完訳版を読破するのが正しい方法なのでしょうが、残念ながらできなかったし、今後もできるかどうか。
少年老い易く学成り難し。
  
 今回読んだのは、講談社青い鳥文庫版。
 現在の版は、藤本ひとみ訳・K2商会絵で、表紙が現代風になっています。
 三銃士(新装版) (講談社青い鳥文庫) 
     
 私が今回読んだのは、旧版の方で、桜井成夫訳、金斗鉉絵、1988年発行。
 桜井成夫さんは1907年生まれの大ベテランなので、別のシリーズに入っていた古い翻訳をそのまま青い鳥文庫に入れたのでしょうか?
  wikipedia:桜井成夫

    
 地の文は違和感ないのですが、会話文に違和感を感じました。
 会話にTPOを感じないんですね。
 例えば王が王妃に
「どうして、あのダイヤの胸かざりをつけてこないのです?」
と話しかけます。
 ここは類型的に、ベタに
「妃よ、お前は何であのダイヤの胸飾りをつけないんじゃ!?」
とか言ってほしいものです。
 最近のヤングアダルト向けの本は、挿絵がマンガのようにキャラが立っていますが、会話でもキャラ立ちが求められます。
 藤本ひとみ訳の新版がどうなっているか、気になるところです。

  
 さて物語は大きく、前半と後半にわかれます。
 前半は、王妃を追い落としてイギリスとの戦争を企む悪漢・リシュリュー枢機卿の奸計を阻止すべく、ダルタニアンや三銃士が活躍する話。
 後半は、結局イギリスとの戦争が始まり、リシュリュー一派との喧嘩も停戦し、一致団結してイギリスとの戦争を戦う話&悪女ミレディーから狙われる話。

 縮約の取捨選択による違いがあるらしく、前回読んだ版では、ミレディーとアトスが因縁の仲だったという点について触れられていなかったように思うのですが、今回の版では触れられていました。
 また、ダルタニャンと三銃士が砦を占拠して朝食を食べた後、旗を取りに行くエピソードがあります。
 前回読んだ版では、旗を取りに行ったのはダルタニャンでしたが、今回の版ではアトスということになっています。
 版による違いを読み比べるのも楽しいものです。
      
 しかしこれだけ膨大で人間関係が複雑でストーリーも入り乱れていると、やはり完訳版を読んで、本当のところはどうなのか、真実を知っておく必要性もありそうです。
    
 ストーリーについては、前半のように、悪の枢機卿一派の陰謀を阻止する、という単純明快なのが面白いですね。
 私としては、そのままずっと銃士隊VSリシュリュー派のエピソードが続く方が分かりやすかったのですが。
 前半、あれだけ一生懸命活躍してイギリスとの戦争を回避しようとしていたのに、後半ではあっさりと戦争が始まってしまうし。
 前半、いがみ合っていた銃士隊とリシュリュー親衛隊も停戦しているし。
 ここで何でイギリスとの戦争が描かれるのか?
 フランス人であるデュマとしては、イギリスに対する対抗心があったのでしょうか?
 歴史的にイギリスとの戦争があったのは事実なので、仕方のないことだったのでしょうか?
   
 本書では最後、リシュリューに呼ばれたダルタニャンは、リシュリューの足元にひざまづいて
「わたくしの命は枢機卿さまにささげます。今後は、どのようにでもお使いだてください。」
と言っています。
 ダルタニャン、リシュリュー派閥入り?
 ダルタニャン&三銃士の活躍で辛うじて均衡を保っていたリシュリュー派VS反リシュリュー派のバランスが大きく変化する大事件なのではないでしょうか?
   
銃士隊のトレビール隊長はリシュリューと仲が悪かったはずですが、その後トレビール隊長との関係はどうなったのでしょうか?
 リシュリューから追い落としの陰謀で付け狙われていた王妃のその後も気になります。
 お慕いしていたバッキンガム公も侍女のボナシウ夫人も殺され、今後はどうなっていくのでしょうか?
(続編ではマザラン枢機卿といい仲になっているようですが)

 本書の最後では、その後のことが少し触れられていて、ダルタニャンは銃士隊副隊長となって活躍し、三銃士は銃士隊を除隊してそれぞれの道を歩んだと書かれています。
 原作ではその後も11巻に及ぶ長い長い物語が続いて居るようです。
 その後の物語が気になります。
 実は、少年少女向け翻訳でも、続編の一部が紹介されたことがあるようです。
 それについてはまた。



■[名作文学]三銃士 その後の展開が気になる
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20111126/p1
■[名作文学]名作文学メルマガ久々の発行です
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20111201/p1

 
wikipedia:三銃士
 wikipedia:ダルタニャン物語
  wikipedia:アレクサンドル・デュマ・ペール

 
 新・三銃士―ダルタニャンとミラディ (少年編) (講談社文庫 (ふ48-5)) 新・三銃士 青年編―ダルタニャンとミラディ (講談社文庫 ふ 48-6)
  ↑視点を変えた再構築版らしい。



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