『ゼンダ城の虜』
偕成社 少年少女世界の名作64(100巻版)
柴田錬三郎・訳
池田かずお*1絵 1970年7月25日 発行
欧米では「ルリタニアン・ロマンス」というジャンルが存在するほどの著名な冒険名作の古典のようです。
私以降の世代では、「ゼンダ」といえば「ゼンタ城の虜」ではなく、「ゼンダマン」(タイムボカンシリーズ第三作)なんではないでしょうか。
小学校の図書室に、この偕成社少年少女世界の名作シリーズが何冊か入っていて、その目録に「ゼンダ城の虜」が載ってるのを見て
「ゼンダマン城の虜や」
と喜んでいました(幼稚過ぎる。お恥ずかしい。) 中学生以降になって、創元推理文庫の冒険小説レーベルに収録されている、古典的冒険文学に興味を持ち、「紅はこべ」「怪傑ゾロ」「スカラムーシュ」「黒いチューリップ」などと一連で読んだのはいい思い出です。 創元版「ゼンダ城の虜」は、続編「ヘンツォ伯・ルパート」も収録されていて威圧されるほど分厚い本でしたが、当時は元気なもので、内容が面白いこともあり、一気に読んでしまいました。
しかし、今、それを読破する自信はありませんねえ。
情けないことです。
本を整理していたら、数年前にヤフオクで落札した偕成社版が出てきたので、読んでみることにしました。
この偕成社少年少女世界の名作シリーズ、子ども向けとあなどってはいけません。
一流の文学者が格調高く執筆した、珠玉の名作全集です。
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20040602/p1
そして「ゼンダ城の虜」は、御大・柴田錬三郎が未来ある少年少女のために、イギリスの古典的名作冒険文学『ゼンダ城の虜』を正編・続編まとめて分かりやすく描き起こして下さったという、文学史上に貴重な翻訳なのであります。
↑中扉。
この中央の絵が「この物語の主なる人々」の『ラッセンダル』に使われています。しかし、私が受け取ったイメージでは、ベルソニン中尉、デチャード少尉を従えるルパート大尉、と感じたのですが。
それで、物語は、架空の王国ルリタニアにおいて、王位継承における兄弟の争いに主人公のイギリス人ルドルフ・ラッセンダルが巻き込まれて大活躍、というお話です。
二人の皇子の争いにおいて、ルドルフは、自分とうり二つのそっくりさんである兄の味方をします。
顔がそっくりだから自然な成り行きなのですが、中学時代に創元版を読んだ時から、果たしてそれで良かったのかと不思議に思っていたものです。
というのは、王位争いをしている二人の兄弟のどちらが王にふさわしいか判断する記述がなかったように思うのです。
国民の間でも兄派と弟派で別れていて、兄の方は外国にばかり行っていて国内のことは顧みない、という声も聞かれます。 本作品は何度か映像化されているようで、私が高校生の頃、深夜に映画版が放送されたことありました。
その映画では、ルドルフ王はひょろひょろのボンボンで、日本語吹き替えでは自分のことを「ボク」ではなく「ボッチ」と言うくらい駄目駄目な感じで、一方、ルドルフ大公はどっしりした貫禄ある人物で、ルドルフの方が王にふさわしいんではないか、と思いながら見たものです。
この映画、ウィキペディアで調べると、以下のどちらかの可能性があるのですが、確定できません。
1952年 アメリカ 「ゼンダ城の虜」(リチャード・ソープ監督 、スチュワート・グレンジャー主演)
1979年 アメリカ 「ゼンダ城の虜」(リチャード・クワイン監督、ピーター・セラーズ主演)
王位継承者が兄のルドルフだと正式に決定し、あせった弟のミハエル太公は実力行使に出て、眠り薬を使ったり、ルドルフを監禁したりして王位簒奪を画策します。
しかし、根っからの悪人ではないらしく、やはり兄を殺すには忍びないようで、ルドルフを殺すことは断固拒否します。
実は本当に悪いのは、ミハエル太公(本書では「大公」表記ではなく「太公」表記となっています)の第一の部下・ルパートでした。
もしミハエル大公が王位を継承していたら、いずれはルパートが牛耳るだろうから、結果的にミハエルの戴冠が阻止されたのは良いことでした。 ウィキペディアを見ると、ルドルフ・ラッセンディルとルドルフ王は、先祖の時代につながりがあった、という記述があります。
はて創元版にそんな記述はあったかな?読み落としたのかもしれません。
柴田版にはそんな記述はなく、他人の空似ということになっています。
ヘンツォ伯・ルパートがなぜ兄のルドルフでなく弟のミハエルに近づいたのか、その辺考察するのも面白いものです。
ルドルフは外国暮らしが長いので近付く機会がなかったのか、ルドルフにはサブト大佐やフリッツというしっかりした側近がいるので近付けなかったのかもしれません。
ミハエル大公の方が脇が甘いので好き勝手やれると思ったのでしょうか。
それで、ミハエル大公の3人の側近・ルパート大尉、ベルソニン中尉、デチャード少尉は三銃士と称されて恐れられています。
これこそまさに“悪の三銃士”でしょう。
ただ、中尉と少尉の方は正編の最後にルドルフに倒されてしまい、
続編『風雲のゼンダ城』(ヘンツォ伯・ルパート)では、生き残ったルパートと雌雄を決します。
↑ルドルフVSルパート 初対決の図
なかなか面白い作品だと思うのですが、最近は忘れられたような存在になっているのが残念です。
ただ、数年前に宝塚歌劇で演じられ、NHK-FM『青春アドベンチャー』でドラマ化されたようです。
どういう意図で企画が上がったのか、その反響はどうだったのか、興味あるところです。
忘れられた名作を発掘し、次世代に継承することは、立派な行いだと思いますよ。
それでは皆様、この夏休み、『ゼンダ城の虜』を読んでみてはどうでしょうか?
ゼンダ城の虜 (創元推理文庫 F ホ 4-1 Sogen Classics)
wikipedia:ゼンダ城の虜
wikipedia:柴田錬三郎
wikipedia:桃太郎侍
翻訳ミステリー大賞シンジケート
【毎月更新】冒険小説にはラムネがよく似合う【初心者歓迎】
第十一回『ゼンダ城の虜』の巻(執筆者・東京創元社S)
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20110906/1315261320
http://honyakumystery.jp/1315261320
赤裸々にブルーでハッピーな毎日
児童書『ゼンダ城の虜』小考
http://ameblo.jp/machang-liangma/entry-11953376302.html
↑ご紹介ありがとうございます
南船北馬 NHK「ゼンダ城の虜」再放送、間近!!
http://nannsenn.jugem.jp/?eid=46
sumire日記
月組「ゼンダ城の虜/ジャズマニア」:宝塚大劇場
http://blog.goo.ne.jp/konomi_konomi/e/b93b19e212094fb80d006ff9f2747859
宝塚歌劇
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/backnumber/000929tsuki/
Egoistic Romanticist>ゼンダ城の虜 枯葉訳
http://www1.bbiq.jp/kareha/trans/html/prisoner_of_zenda,_the.html
ブクログ http://booklog.jp/item/1/4488505015
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