安倍政権を笑い倒す (角川新書)
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タイトルを見ると、最初から最後まで安倍政権をテーマにして安倍政権を笑い倒しているような印象を受けますが、それは第1章のみで、それ以降は、もっと大きな視点から笑いについて語り合いながら、ついでに付け足し程度に
「だから(それに比べて)安倍晋三はダメなんだ」と嗤い、
「またつまらぬものを斬ってしまった」
という本。
『安倍晋三を嗤う』というタイトルの方が良かったかも。
第1章 安倍晋三の無知、無自覚、傲岸を嗤う
この章が一番タイトルに合った章。
遠藤誠が、左翼と右翼の違いについて聞かれて、太平洋戦争を侵略戦争とみるか・正義の戦争と見るかが分かれ目だと説明すると、山口組組長渡辺芳則が
「そりゃあ、あの戦争は侵略戦争にきまってますよ。だって、日本の軍隊が、中国や東南アジアというほかの国に攻めこんだわけでしょう。ほかの国の縄張りを荒らしたら、侵略になるのはきまってますわな」
「それが左翼だというなら、私も左翼ですな」
……と言うエピソードが紹介されています。
となるとやっぱり安倍晋三は右翼で、安倍政権は右翼政権ということだな。
「バカな大将、敵より怖い」
の話も出てきます。
第2章以降は、安倍政権なんてチンケなものから離れて、もっと大きく、哲学的・文化人類学的なところから笑いについて対談。
第2章 「笑い」を抹殺するのは誰だ? では、
「まじめってそんなにいいことか?」
「まじめもほどほどにして、もっと笑いを」
というフレーズが出てきます。
第3章 笑いは弱者の最高の武器である では、
正岡子規、夏目漱石、森鴎外、太宰治、三島由紀夫などを例に挙げて笑いについて語り合います。
第4章 大切なことはみんな、笑いの「師」が教えてくれた では、
立川談志、マルセ太郎、永六輔などを例に挙げて笑いについて語り合います。
第5章 笑いは人間を解放する では、
下ネタと涙について語り合います。
「下ネタ、エロ話を蔑視するな!」
「笑いと涙は表裏一体、セット」
「戦争中は、笑いだけでなくて、涙も禁じられるわけですよ。」
ところで、
「笑いのない場所というと、神社はないよね。」
という記述があります。
しかし、本章のテーマに絡めていいますと、性器を祀った神社は結構あります。
私も行ったことありますが、南紀白浜の歓喜神社は、性器を祀った古い形の神社が復元されたものだといいますし、人形供養で有名な加太淡島神社も、奥の方に性器を祀った社があります。
また、国家神道の総本山である靖国神社でも、夏のお祭りでは、江戸川乱歩の小説に出てくるような見世物小屋が出るといいます。
お祭りといえば、かなまら祭りを始めとして、色々ありますね。
第6章 「I’m different!」違いを愛そう では、
アメリカでは他人と違うところを長所として伸ばす教育をしているが、日本では均一化する方向で教育している、という話題から色々と語り合う。
佐高 自分のスタンスを表に出せない。あるいは、自分の考えというのがないのかもしれない。右へ倣えで生きてきた人たち。だけど、安倍政権を支えているのはそういう人たちなんだよね。
松元 ええ、立ち位置がはっきりしていなくて、何か曖昧模糊とした人たちが安倍政権を下支えしてるんだってことがわかりました。
……と、安倍政権を笑いを圧殺する政権だと規定し、笑いを武器に安倍政権と戦っていこう、という論調。
趣意には賛成します。
ただ、私の生育環境だとか育ってきた来歴から見て、私個人が笑いに抱く感情は、少々複雑です。
私はお笑いだとかバラエティ番組歌番組芸能人が出る番組を見ることを禁じられた環境で育ちました。
だから今でも、本書で挙げられている本物の芸人も、けなされているテレビ芸人も知りません。
ドリフターズやピンクレディーやひょうきん族全盛時に育ちながら、私には語るべき思い出はありません。
幼稚園のバス遠足の時、東村山音頭を順番に歌おうとなって、歌詞を知らない私は他の子が歌ってるのを聞いて必死に覚えたものです。
その後もお笑いに対する敵意や差別意識など複雑な感情があり、結局お笑いとは縁がないままでした。
だから恥ずかしながら私のお笑いに対する能力は、安倍晋三並みです。
本書では、お笑いは弱者が強者に対抗するためのもの、と高く評価するスタンスですが、本当にそうでしょうか。
例えば、いじめ問題が問題になる時、よく、加害者側が、冗談のつもりだったとか遊んでるつもりだったとか言います。
集団生活の上で、いじめや仲間外れが、お笑いの形をとって現れることもあるのです。つまり、悪用すれば、笑いは言葉の暴力にもなるのです。
校内暴力や学級崩壊も、同じことです。問題生徒が授業妨害する時も、笑いの形をとって現れることがあります。
私もいじめまではいきませんでしたが、優等生タイプだったため、冗談の形で揶揄されることも多くありました。
優等生タイプだった私にとっては、授業中の不規則な発言や笑いは、学級崩壊やいじめにつながりかねない怖いものでした。
本書で例に挙げて誉めている類の笑いは、ごく一部の上品なコミュニティで通用しているような高尚で特殊な例であって、一般的庶民の間で一般的に使われている笑いは、そんな上品なものではありません。
つまり、私の成育歴からいうと、お笑いとは、悪い奴が悪いことをやる時の隠れ蓑のようなものだったのです。
そして中学3年時の問題児による学級崩壊は優等生タイプだった私の精神を深く蝕み、無謀にも短時間睡眠に挑戦していたために睡眠不足となって精神的ストレスに対処できず、精神に変調をきたし、その後転落に転落を重ね、人生を棒に振ってしまう結果になりました。
本書では笑いのいい面ばかりを取り上げていましたが、笑いとは使い様によって、良くも悪くも使えるのです。
そういえば一時、「ネクラ」というけなし言葉がはやりました。私はほとんどしゃべらないし面白くもないしマイナス思考というか最悪思考なので、まさに「ネクラ」そのものです。
中学3年でいい加減精神に変調を負っていた私は高校デビューに際し、「ネクラ」と言われることを恐れるあまり、わざと明るくアホみたいにふるまって、本当の自分との格差が拡大して分裂してしまい、精神が破綻し、人生を棒に振ることになりました。
こうやって見ると、私は、「笑い」に恵まれず、無理やり使おうとして精神に傷を負って人生に落伍したわけです。
「笑い」を使いこなせないと大事故が起こって自爆します。
まさに原子力や核兵器のような存在です。
それはともかく、本書でもチラリと、首相に取り込まれた太田光を批判していましたが、笑いの負の面・悪用される面についても検討して頂きたかった。
例えば、百田尚樹などは、失言を批判されると、よく「冗談やったのに。冗談の分からん奴や」と言い逃れします。
学校時代の悪行も、後になって語ると、お笑い種の良き思い出話、となる展開もありますね。そんなのは絶対に許してはいけないと、被害者側になることが多かった私は思うのですが。
自民党中川雅治氏、いじめ加害告白
「全部脱がし」「おちんちんにマジック落書き」
「いじめられる方も弱く」
http://matome.naver.jp/odai/2143867990161669201
村野瀬玲奈の秘書課広報室
10代の頃のいじめ行為や暴力行為を悔恨も無しに自慢げに語る自民党議員たちのおぞましさ (追記あり)
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-6558.html
第2章の見出し
「まじめってそんなにいいことか?」
「まじめもほどほどにして、もっと笑いを」
も、使い方を間違えると危険なフレーズです。
私のように、おとなしくてまじめでネクラな優等生タイプにとって、こんな辛いフレーズはありません。
まさしく、高校デビューの時、こんなことを言われたくないがために過剰に自己防衛に走り、精神に傷を負って失敗したわけです。
まじめな人はまじめなままでいいではありませんか。
シモネタが苦手な人はシモネタが苦手なままでいいではありませんか。
本書では、下ネタを言える人をやたら持ち上げています。しかしそれは幻想ではないのか。
学校生活にしろ、職場にしろ、地域社会にしろ、ぺちゃくちゃおしゃべりばかりして(特に下ネタ)いる人は、肝心な時に役に立つものかどうか。
夏目漱石の小説『坊ちゃん』でいうと、野だいこのような奴も多いものです。
下ネタを言える・言えないで判断するのではなく、結局最後は、個人の性格心情の問題ではないでしょうか!というか、下ネタで笑えない・下ネタが言えないというだけでマイナスの烙印を押されてはかなわん!!
……と、お堅い家庭環境で育ったためにお笑いや下ネタが苦手な私の個人的感想です。
本書では、安倍晋三はお笑いの分からない薄っぺらい男だ、という論調ですが、そういう観点から見ると、橋下徹は安倍晋三と比べ物にならない強敵ではないでしょうか。
確かに橋下の笑いは、本書で規定している“本物の笑い”ではなく、立川談志からも永六輔からも認められない下品でヘイトな笑いですが、そんな上品な定義論をやっている場合ではありません。
TVに出れば、笑わせた者勝ちです。
橋下には聴衆を乗せるカリスマ性があるので、怖いのです。
橋下徹は“大阪独裁住民投票”に敗北し、引退を表明したのですが、未だに色々と浅ましいことをやっています。
安倍改造内閣にサプライズ入閣する、という噂もあります。
もしそんなことになれば、大変なことになります。
ぜひお二方には、【橋下徹を笑い倒す】続編を行って頂きたいものです。
そして橋下徹といえば、橋下幇間芸能人が多くいます。
吉本の芸人にも橋下幇間がいて、その親玉として、やしきたかじんや辛坊治郎がいます。
こいつらはお笑いで体制翼賛をやるのでたちが悪いのです。
やしきたかじんや辛坊治郎が司会をやってる低俗お笑い番組は、ネトウヨ養成番組と化しています。
笑いを使うのは、安倍政権を批判する人々だけではありません。
ネット上の世論で覇権を握っているのは、ヘイトな嘲笑を使うネトウヨ・ネトサポ・自民党工作員どもです。
ネトウヨまとめサイトなどは、ヘイトな嘲笑で充満しています。そこで笑い倒されているのは、マトモな言論を守っている良識ある人々なのです。
ネトウヨこそ、お笑いを悪用している存在なのです。
(もちろん、本書の定義によると、そんなのは本当の笑いではないでしょう。しかしそんな悠長なこと言っている場合ではありません。こちらは使わなくても、ネトウヨ達は下品な笑いでどんどん攻撃してくるのです。)
もしネトウヨや自民党工作員からヘイトで卑劣な嘲笑で攻撃された時、どう対処するか。
直接相手を負かすことはできなくても、その議論を見ている第三者がどう判断するかにかかっているでしょう。
お笑いを制する者が言論戦を制す!
安倍政権と戦う我々は、正しいお笑いを理解し、使えるようにならないといけません。
私も上で書いたように、お笑いに対しては不幸な思い出が色々とあります。
しかし、不幸の連鎖から抜け出すためには、正しいお笑いと和解することが必要なのです。
お笑いの能力は安倍晋三並みですが、今後がんばらなければ。
松元 表現の自由に対する感覚ということで言うと、マルセ太郎さんが言っていたことが思い出されます。
マルセさんは、「ラ・マルセイエーズ」と「君が代」の違いという話をしてくれました。「ラ・マルセイエーズ」というのは革命の歌。フランス革命のとき、自由を勝ち取った人々は凱旋門に向かって行進し、みんなが自発的にこの歌を歌い、互いにバラの花を渡してこれを喜び合った。民衆の歌なんだ、と言うんですね。
では日本の「君が代」はどうか。誰からともなく歌い出すか。あれは、「ご起立お願いします」「では国家斉唱!」「1、2、3、はい」って言わないと歌えない。号令されないと歌えない歌だと、マルセさんが言うんです。
佐高 うん、「ラ・マルセイエーズ」が解放の歌というならば、「君が代」は統制されて、号令のもとに歌う萎縮の歌ですからね。
松元 この国歌の違いが、民衆の精神をよく表している気がしたんですよ。(P97)
wikipedia:松元ヒロ
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ぷくぷくの社会を見つめ直す?
佐高信・松元ヒロ『安倍政権を笑い倒す』
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大阪の弁護士大川一夫のブログ
「安倍政権を笑い倒す」
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村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき
安倍政権を笑い倒す
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武器としての笑い (岩波新書)
蛇崩緑堂の「何を今さら?」ランダム乱読日誌
『武器としての笑い』飯沢匡
http://imasarabuch.seesaa.net/article/49592666.html
紙屋研究所 飯沢匡『武器としての笑い』/45点
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/bukitositeno.html
定年後の読書ノートより 武器としての笑い、飯沢 匡 著、岩波新書
http://www.eva.hi-ho.ne.jp/nishikawasan/tool/kigeki.htm
My Book My Life<武器としての笑い>の痛快さ 三谷幸喜「笑の大学」映画化
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