風と雲と虹と　第11回　餓狼の頭目

　今回、最初から30分近く藤原純友（緒形拳）について描かれ、残りの10分程度で京都の将門パートが描かれました。
　これがＷ主人公制の長所です。
　今後の大河ドラマでも複数主人公制を採用したら色々と工夫できるのではないでしょうか。
　
　船で伊予の国に向かう純友は途中で海賊達の首領・藤原恒利（今福正雄）に面会する。
　

　無礼な見張り・鯖（宇津海仙）を手名付ける。
　男はこういったドラマやマンガのシーンを読んで人間関係を覚えていくんやな。
　

　鹿島玄明（草刈正雄）が珍しく失態で逆さ吊りに。海賊どもは手ごわいぞ！
　

　しかし純友の交渉で救われる。人間的魅力がないと何でも務まりませんな。
　

　船着き場に偶然やって来た山陽道巡検使・藤原子高（さねたか）（入川保則）に面会。
　子高は海賊退治で名を挙げていたが、その方法は残虐なものだった。
　海賊退治という名目で無実の民人を処刑し、民人に海賊を憎ませると海賊は孤立して困るという方法論。
　一応理屈は通っているが残酷。
　思えば現代でもそれに似たような発想の政治家や官僚や経済学者がいそう。

　伊予の国国司を訪れ、上司に面会。
　当時の国司は中国風の机と椅子なんですね。
　　

　守の平維久（森塚敏）は「人の良い老人」。
　介の藤原正経（寺田農）は「油断がならぬ」人。
　掾（じょう）の純友はこれらの方々に続く３番手ということだ。
　しかし平維久はちょっと恍惚が入っているようでギャグマンガに出てくるキャラ風で面白い。
　当時としては長命の高齢者という設定か。
　検索しても見つけられない。架空の人物か？

　

　純友パートに続いて、残り１０分程で将門パート。
　平将門（加藤剛）と三宅清忠（近藤洋介）は紀豊之（綿引洪）に例の隠れ家に呼び出される。
　豊之は悪政に対して民の怒りが起きないのは、政府を宗教的に信仰しているからだと主張。
　政府の宗教的権威を貶めるための行動を起こそうと誘う。
　しかし清忠は胡散臭さを感じてそれには乗らず、将門もそれに従う。
　豊之達は内裏に動物や鳥の死骸を置いて都を騒がすが、なぜか発覚し捕えられる。
　
　紀豊之には武力はないので武力に変わる方法で都を騒がせる方法を取りました。
　今の目線で見ると、単なる嫌がらせの域を出ないスケールの小さい行為のように見えます。
　しかし、武力も権力もない一学生の身分でできる最大限の計画だったのです。
　でもやっぱり早まった行動でしたね。
　清忠は「若い」と批判していました。
　清忠のようなベテランともっとよく話し合って行動を練るべきでした。
……とこんなことを上から目線で言ってる私も年を取ったということか。
　しかし何で犯行がばれてしまったのだろうか。
　当時の役人の調査力も馬鹿にできませんね。

　紀豊之は「純友の殿が知ったら喜んで下さるだろう」と言ってましたが、本当のところはどうなんでしょうか。
　もし純友に相談していたらどうなっていたでしょうか。
　純友が賛成したなら傀儡達を使ってもっと手際よくやったはずです。
　そう考えると紀豊之の計画はやはり若者だけで考えた軽率な行動だったのかもしれません。
　紀豊之は学生（がくしょう）の殿と呼ばれ、その仲間は「学生」とクレジットされています。
　当時の「学生」とは一体どんな身分なのだったのでしょうか。ちょっと興味ある。
　そういうことで彼らの行為は当時の「学生運動」ということになります。
　
　ところで、今回のサブタイトルの「餓狼の頭目」というのは一体誰なんでしょうか。
　考えられる人物としては、藤原恒利・藤原子高・紀豊之あたりか。
　一番可能性が高いのはやはり藤原恒利です。しかし、海賊を例えるのに「狼」とは少し変です。
　藤原子高は政府高官なので餓えてはいないし。
　意外なところで作戦が失敗して捕まってしまった紀豊之のことか？
　

　似たようなシチュエーションだから構図が似るのは当然のことなのですが、将門が紀豊之を見送るシーンは、第一話で将門が田原藤太（露口茂）を見送ったシーンと構図が似ているのです。
　だから将門にとって紀豊之も田原藤太と同じように影響を与えたことを示唆しているのかと思えるのです。
　
　　　　