さあお立合いお立合い!
今回紹介する本書は、ドイツ版少年探偵団だよ!
ドイツの仲良し5人組のメンバーの一人の教科書の中に謎の指令書が入っているんですよ!?
廃墟となっている空き家に忍び込んで次の指令を受け取ること!
なんと子どもっぽいいたずらでしょうか!しかし子ども達の世界は子ども達の世界で完結しているのです!
五人はこの楽しくて怪しいいたずらに乗ってみることにするのです!嗚呼楽しき子ども達の世界!
そして五人はその後、「赤いU」を名乗る謎の人物から次々と指令を受け取り、遂行していくのです!
最初のうちは酔っ払いの靴屋のペットの小鳥達を逃がしてやれとかいう、いかにもジュブナイル的な子どもっぽい指令だったのです!嗚呼世間とは隔絶したジュブナイルの世界!
ところが指令はエスカレートしていき、やがては「12月17日」に学校を休校にしろとかいう荒唐無稽なものになり、そしてついには脱獄囚の監視をし、クラスメイトの誘拐事件が発生!と世間を騒がす大事件へとつながっていきます!!
さあドイツ版少年探偵団ともいえる本作品、明智小五郎的な存在も登場しますよ!学校休校事件でも活躍した自由人・ベールマンさんだ!
子ども達の生き生きとした日常生活が凶悪犯の行動と交わる時、そこに事件が発生します!果たして子ども達は無事生還することができるのでしょうか!!!
……なかなか楽しい物語でした。
ドイツの少年少女の生活がうまく描けています。
この仲良し五人組、同じクラスのクラスメイトではなく学年が違うのです。
しかし教科書に命令書が入ってるなんて、入れたのは誰だ!?ある程度絞られてくるような。
はじめは完全に学校内の事件に終始するジュブナイルミステリーかと思っていたら、やがて話は大きくなっていって、それもまた良し。
5人組の各人に見せ場があるのもまた良し。
そして命令を与えていた「赤いU」の正体は……!?
この正体、分かってみればススキの穂みたいなもんで、流れ次第ではしらけたり怒り出したりすることもあり得たかも。
特に殺伐とした現代の日本では炎上してしまうところではないでしょうか。
しかし、さすがは冷静なドイツの少年少女です。無事仲間というかボスと認められてめでたしめでたしの結果なのでした。
以前紹介したポール・ベルナ『尾行された少年たち』と同じく、学研小学生文庫第2集から。
学研「少年少女サスペンス推理」または「傑作推理ブック」に入っていたものからの再編集のようです。
このような海外の同時代のジュブナイルミステリー作品を集めたシリーズというのはいいですね。
ポール・ベルナについてはネットを検索すると幾つか情報が出てきたのですが、今回のヴィルヘルム・マッティーセンについてはほとんど出てきませんね。
もちろん、学研の『赤いUの秘密』の古本販売については出てくるのですが。
訳者あとがきによると、作者は1891年生まれで1965年没。多くの児童文学を残されたということです。
エーリッヒ・ケストナー(1899年2月23日 - 1974年7月29日)とほぼ同時代人ですね。
本作品は1932年出版。ケストナーの『飛ぶ教室』は1933年です。
本作品の5人組も『飛ぶ教室』の五人組もナチスの時代に直面していたわけです。
(斜影の森から)ケストナーの少年たちと「白バラ」 福島申二
https://www.asahi.com/articles/DA3S14920480.html
>この本が出版された1933年、ヒトラーが政権についた。
>学年から推して少年たちを10代半ばとすれば、彼らが生まれたのは1910年代後半。連想したのはあの「白バラ」のことだ。
>「白バラ」は実話である。「飛ぶ教室」はフィクションだが、二つを重ねるとあの世代への想像は深まる。
>「飛ぶ教室」の愛すべき少年らの時間は、物語の最終ページまでだ。先はない。その後に待ち構える「むごい歳月」を、生き延びたのか、死んでしまったのか。
>自著が焚書(ふんしょ)・発禁の憂き目に遭ったケストナーは戦後に言った。「ころがる雪の玉が雪崩にならないうちに踏みつぶさなければならない。雪崩になってからでは、食いとめられない」
●ブクログ
https://booklog.jp/item/1/4051506843
https://booklog.jp/item/1/4051000605
https://booklog.jp/item/1/B07628KRSY
●読書メーター
https://bookmeter.com/books/612580
https://bookmeter.com/books/3390142
https://bookmeter.com/books/13033488
ameqlist 翻訳作品集成(Japanese Translation List) ヴィルヘルム・マティーセン
https://ameqlist.com/sfm/mathies2.htm
周子の森 『レクイエム』考
http://home.catv.ne.jp/dd/pub/shuko/requiem/requiem3.htm
↑モーツアルトに関する短編恐怖小説がアンソロジーで紹介されているらしい。
ポール・ベルナ『尾行された少年たち』
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2021/11/03/202555
メアリー・ポピンズと「自由からの逃走」
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2021/07/07/203000
↑本書と同じ学研小学生文庫の一冊です。
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