OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

織田作之助『猿飛佐助』(声に出して覚えたい!)

第1回 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0064001.html から
第17回 http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/l/0064017.html まで
 
 猿飛佐助というからには佐助を中心とした真田十勇士の活躍が描かれているのかと思えば、ちょっと趣が違った。
 猿飛佐助というと、小柄ですばしっこいというイメージがあるが(杉浦茂の絵を思い出す方も多いかもしれない)、ここに描かれる猿飛佐助は、あばた面の大男である。性格は豪快なところもあれば、自分の顔を恥じて好きな女性の前には出られないといったナイーブな部分も持っている。
 
 佐助は幼馴染で相思相愛の楓と共に村で開かれた大晦日の悪口祭に出かけるが、そこで佐助のプライドが傷付けられたため、その日を限りに山中で隠遁生活を始める。
 朝に猿と遊び、昼は書を読み、夕は檜の立木を相手にひとり木剣を振うて三年。
 戸沢円書虎(ツアラツストラ)、またの名を白雲斎と名乗る忍術家と遭遇し、忍術をマスターする。
 しかしツアラツストラとはすごい読み名だ。しかしどうやったらそう読めるのだろう。
 
 諸国漫遊に出かけた佐助、真田幸村一行と出会い、家臣として取り立てられる。
 しかし歌会の日、やはり家臣となっていた楓に再会、この顔では合わせる顔がない、と遁走、再び諸国漫遊に出かける。
 石川五右衛門と対決、勝利するがその後、復讐に燃える五右衛門の作戦により、五右衛門の部下の木鼠胴六率いる一隊に一敗し、捕らわれる。檻の中で佐助を捜しに出ていた三好清海入道と再会。やはり佐助を捜して旅していた楓に助けられ、木鼠胴六一味を成敗。しかしそのまますぐに逃走。三好清海入道と楓は再び佐助を追って旅に。
 やがて石田三成徳川家康の決戦が近いという噂が流れ、諸国漫遊中の佐助は真田幸村の待つ信州上田城に向かう。
 さあこれからいよいよ猿飛佐助と真田十勇士の活躍が始まるぞ……というところで終了。これで終わりとはもったいない。この調子で真田十勇士の活躍も描いてほしかった。
 その他にも、楓とはその後どうなったのか、石川五右衛門との決着戦は、富田無敵が捜し求めている首のない盗賊は見つかったのか……。伏線が伏線のまま終わって消化し切れていないという感じ。
 
 そんな不満もあったが、内容自体は非常に面白かった。もっと続きが読みたい、早く終わりすぎだという意味での不満である。
 
 織田作之助というと、私は名前だけしか知らなかったが、『夫婦善哉』が有名らしい。文芸作品を書いた人かと思っていたが、この『猿飛佐助』は、娯楽的・大衆的な作品で、気楽に楽しく読める。
 しかし文章はなかなかの名文である。
  
「――遠からん者は音にも聴け、近くば寄って眼にも見よ。見ればアバタの旗印、顔一面にひるがえる、あきれかえるの醜男と、六十余州かくれもなき、鷲塚佐助のこの面を、とっくり拝んで置け!」
  
「おい、入道とやら。その坊主頭、打ち見たところ、ちと変哲が無さすぎて、寂しい故、枯木も山の賑いのコブを二つ三つ、坊主山のてっぺんに植えつけてくれようか。眼から出た火で山火事無用じゃ」
 
……などなど、流れるような名文が次々と出てくる。
 織田作之助は劇作家を目指していた頃もあったみたいだから、このような台詞がポンポンと出てきたのだろう。
 斎藤孝言うところの「声に出して読みたい」ような文章とはこのような文章なのだろう。
 私もこの『猿飛佐助』に出てくるような言い回しを繰り返し書いたり声に出したりして体に染み込ませ、必要に応じてこんな啖呵を切ってみたいものだ。
 
 子ども版 声に出して読みたい日本語 10 知らざあ言って 絶景かな/歌舞伎・狂言
 声に出して読みたい日本語
 


 ↑デレデレーン!このマンガ、おもしろいね。
 
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織田作之助 出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B9%94%E7%94%B0%E4%BD%9C%E4%B9%8B%E5%8A%A9
 
杉浦茂 出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%89%E6%B5%A6%E8%8C%82
 




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