さらば、ヘイト本! 嫌韓反中本ブームの裏側
本書の成立過程について、巻末に掲載されている
おわりに エピタフ、そしてマニフェストへ
に述べられています。本書編集者の木瀬貴吉さんが「宝島とガロで育った」と告白し、その宝島社と青林堂が「ヘイト化」していると嘆いておられます。
本書の編集にあたっては90年代前半までの別冊宝島を「手本」としているという。
「全体の「作り」については、別冊宝島がもっていた賑やかさ、切り口の目新しさ、そして書き手の視点を最優先させることを見習った。書き手によって文体が異なったり、またカタログ的な章があったりする点も、かつての別冊宝島の空気感を醸していると自負する」
さらに書き手については
「多彩な作家が集った旧青林堂の梁山泊感(そのような日本語があればの話だが…)が再現できたのではないだろうか」
宝島もガロも知らない私にはよく分からない形容なのですが、本書が読みやすかったのは確かです。
第1章 嫌韓誘導記事を量産した編プロ社員が語る「責任」(木村元彦)
第6章 『マンガ大嫌韓流』発行人との対話(木村元彦)
出版社でヘイト本の編集に関わっていた編集者が紹介されています。どちらも良識を持ったいい人というイメージで描かれています。こんな方々が出版社の意向で商売のためにヘイト本を出している現実は日本が劣化している証拠だと思います。
しかし、ヘイト本を批判する本でヘイト本を編集していた人をこんな風に優しく描くとは、ヘイトを批判している人の優しさ・冷静さを表していると思います。
ヘイト本ではサヨクだとか反日だとかレッテルを貼られた人間は容赦なく悪魔の申し子のように徹底的に醜く叩かれますから。
wikipedia:木村元彦
第2章 「ガロ」から「大嫌韓時代」へーー(大泉実成)
蟹江幹彦社長の趣味でヘイト出版社となった青林堂についての取材記事。
ネトウヨ雑誌『ジャパニズム』創刊のきっかけは、『撃論ムック』を編集していた西村幸祐が版元と揉めて解任されたので蟹江社長に企画を持ち込んだからだという。しかし西村の仕事が杜撰だったので西村がお払い箱となりました。たかがネトウヨ雑誌でも色々事情があるのだと笑うべきところ。
「これまでオタク取材を続けてきた僕の感覚からすると、オタクは好きなキャラクターや世界観と戯れていくうちに少しづつ内面的に成長し、人格も成熟していく。そのように、蟹江社長が「変わる」可能性はないだろうか」
「同世代を生きた人間として、彼にいつかそんな時が来ることを願ってやまない」
と例によって優しい筆致。ヘイト本ではサヨクだとか反日だとかレッテルを貼られた人間は悪の権化のように醜く描かれて救いも逃げ場もなく滅茶苦茶に叩かれますよ。
wikipedia:大泉実成
第3章 花田編集長は「ヘイト本というほうがヘイト!」と逆ギレした(梶田陽介)
ヘイト呼ばわりされたことに腹を立てて挑戦状を叩きつけて来た花田紀凱が野間易通との公開討論にビビッて敵前逃亡しながらも負け犬の遠吠えを繰り広げた討論会の誌上中継。
第4章 検証・『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった』(加藤直樹)
関東大震災における朝鮮人虐殺事件否定論のネタ本を徹底批判。
wikipedia:工藤美代子
加藤康男 http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%C3ƣ%B9%AF%C3%CB
wikipedia:加藤直樹 (著述家)
9月、東京の路上で
http://tokyo1923-2013.blogspot.jp/2013_09_01_archive.html
「朝鮮人虐殺はなかった」はなぜデタラメか 関東大震災時の朝鮮人虐殺を否定するネット上の流言を検証する
https://shar.es/1MWMA8
工藤美代子/加藤康男「虐殺否定本」を検証する
kudokenshou.blogspot.jp/
第5章 「ヘイト本」羊頭狗肉度ランキング(ころから編集部)
“羊頭狗肉”という観点からランキングしているので、少々分かりにくい。タイトルと内容が違っているランキングなので、上位ほどタイトルほど有害ではない・下位ほどタイトル通り有害ということです。
ひねりすぎてややこしい。
ストレートに悪質度によってランキングした方が分かりやすいと思う。
これでは一般大衆に分かりにく・伝わりにくいのではないでしょうか。
はじめに 嫌韓反中本ブームを蘇らせないために
で、2015年現在、「嫌韓反中本」がオワコンになっている、と記述されています。
本当にそうか?2017年11月現在、とてもそうは思えないのですが。
実際、梅田の大きな書店に行って近現代史・ジャーナリズム・政治関係の棚を見てみると、「嫌韓反中本」に埋め尽くされています。
そして2015年に本書が徹底論破したはずの関東大震災の朝鮮人虐殺デマ説も、未だに力を持っています。
歴史修正主義は決してオワコンではありません。論破しても粉砕してもゾンビのようによみがえってきます。
これは言論による戦いです。良識ある人々は本書のような本を読んで正しい知識をつけ、歴史修正主義者のデマ宣伝に負けない強さを身につけなくてはなりません。
さらば、ヘイト本! 嫌韓反中本ブームの裏側
核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと さらば、ヘイト本!
http://d.hatena.ne.jp/oizumi-m/20150523
愚銀のブログ
『さらば、ヘイト本! 嫌韓反中本ブームの裏側』 ころから
http://kghayashi.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-6558.html
京都アカデメイア【書評】
大泉実成・加藤直樹・木村元彦著、
『さらば、ヘイト本! ――嫌韓反中本ブームの裏側』
http://www.kyoto-academeia.sakura.ne.jp/index.cgi?rm=mode4&menu=book_review&id=87
Rooftop CULTURE > さらば、ヘイト本!嫌韓反中本ブームの裏側 / 大泉実成・木村元彦・加藤直樹・梶田陽介
http://rooftop.cc/review/culture/150601174724.php
弁護士会の読書 さらば、ヘイト本
http://www.fben.jp/bookcolumn/2015/07/post_4392.html
売れるという理由だけで醜悪なヘイト本が生まれた構造。ヘイトスピーチは表現ではない! | 週プレNews
http://wpb.shueisha.co.jp/2015/07/28/51312/
赤羽の小さな出版社 ころから
http://korocolor.com/
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ブクログ
http://booklog.jp/item/1/4907239149
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