OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

手塚治虫【地球の悪魔(地球1954)】【大洪水時代】

【地球の悪魔】
 この物語の舞台となる十三里村は、タヌキが出没する日本の昔ながらの古き良き田舎です。今ではほとんど見られなくなった田舎の光景ですが、昔はこういう光景が一般的だったのでしょうね。
 ウィキペディアによると、十三里村は手塚治虫が幼少時を過ごした兵庫県川辺郡小浜村(現・宝塚市)がモデルのようです。 
 その田舎の村に、場違いな未来風の地下要塞が建設中です。これは一転して未来風の描写です。
 本作品の原題は『地球1954』といって1954年に公開されたもののようです。当時の日本はあの悲惨な戦争が終わって復興しつつある時代で、科学文明がもたらす未来に希望が持てた時代だったのでしょう。一方、手塚先生は科学のもたらす負の側面にも危機感を持ち、警告するメッセージも本作品に込めています。
 手塚治虫自身を始めとして手塚先生のマンガ家仲間も多数出演し、筆が乗っています。パチンコ屋の子分の愚連隊の一員に中年期の石森章太郎らしい人もいます。当時石森章太郎はまだ若かったはずですが(というよりデビュー前だ)。謎の怪人・デモノバースの描写も連獅子の動きを思わせる流暢さに躍動しています。
 終戦後の解放感と自然の豊かさ、この心地よい空気感の中で展開されるSF活劇!私の大好きな作品です。
 ところで、デモノバースの正体は何だったのでしょうか。
 脳腫瘍を原因とする二重人格とは面白い解釈です。
 しかし、原爆や水爆やコバルト爆弾の開発者も言及しているわけだから、高野博士の個人的妄想というのは無理があります。やはり背後に何らかの組織があるのではないのでしょうか。

 私は本書・手塚治虫漫画全集第9巻は中学時代に購入しました。
 私が住んでいたのは小さい書店が1軒しかない田舎の町でしたが、今は無きローカル私鉄を30分乗って行った隣の市には小さな書店が複数あり、小さな古本屋も1軒ありました。その古本屋に手塚治虫漫画全集が何冊か入っており、そこで購入したものです。奥付を見ると1977年6月15日発行の初版。手塚治虫漫画全集の第一回配本です。和歌山県にある小さな市とはいえ、手塚治虫漫画全集の第一回配本を買った人がいて、それを買い取って販売していた古本屋があったのです。日本人の出版文化の水準は高かったのですね。


[wikipedia:地球の悪魔]

[wikipedia:福井英一]
[wikipedia:馬場のぼる]
[wikipedia:高野よしてる]
[wikipedia:石ノ森章太郎]

手塚治虫公式サイトによる解説
  https://tezukaosamu.net/jp/manga/266.html
  https://tezukaosamu.net/jp/war/entry/63.html

東光堂/手塚治虫「地球の悪魔」
  https://k.mandarake.co.jp/auction/item/itemInfoJa.html?index=312183


ブクログ
  https://booklog.jp/item/1/406108609X
  https://booklog.jp/item/1/4063737470
  https://booklog.jp/item/1/B00JPXE2G6]
読書メーター
  https://bookmeter.com/books/485204
  https://bookmeter.com/books/368370
  https://bookmeter.com/books/8948573


【大洪水時代】
 小松左京の『日本沈没』より前に日本を沈没させてしまった物語。北極海上の原子力要塞の爆発で世界の陸地の3分の1が海に沈んでしまうとは、大惨事です。
 洋画のパニック映画のような展開。
 俳優のジェームズ・メイソンをモデルとしたメイスン氏が主人公の兄役として登場しているので余計に洋画の雰囲気が漂っています。
 主人公の友人・浦島くんを演じているのはサボテン君らしい。坊主頭になってるので気付かなかった。確かにガニ股で歩いています。
 ヒゲオヤジが悪人役で登場しています。さらに、アセチレン・ランプがいつもとは違った弱い面を見せる悪人として描かれています。初めて読んだ時、私はこの物語のアセチレン・ランプが印象に残りました。普段は悪い奴がたまにいい面を見せると印象に残るものです。
 最後のコマで
「人類はまだまだほろびはしないでしょう…」
とハッピーエンドのように終わっています。
 しかし現実問題として、その後どうなるのでしょうか。
 日本は山地を残してほとんど沈没したというのに。
 果たしてこの箱舟に乗った面々が生命をつないでいけるかどうか。むしろここからが本当の物語の始まりなのかもしれません。

 ところで、箱舟に馬が3頭も乗っています。当時の東京(でしょうか?)には馬がこんなにいたのでしょうか?動物園や競馬場にいた馬なんでしょうか?その一方で、犬や猫は乗っていないようです。手塚先生のイメージでは犬や猫より馬の方が一般的だったのでしょうか?そういえば『フィルムは生きている』にも馬のアオが登場しました。当時の農村では馬や牛が一般的にいたそうです。六車由実さんによると、馬を飼うか牛を飼うかでも違いがあったようです。

驚きの介護民俗学 六車由実
  https://diletanto.hateblo.jp/entry/20160223/p1


公式サイトによる解説
  https://tezukaosamu.net/jp/manga/239.html
  https://tezukaosamu.net/jp/war/entry/65.html


漫画の神様「手塚治虫」が生んだスター・システム
https://ebookjapan.yahoo.co.jp/content/author/209/starsystem.html

[wikipedia:手塚漫画のキャラクター一覧]


ブクログ https://booklog.jp/item/1/4041851246
読書メーター https://bookmeter.com/books/243992

マンガ映画と吉川英治【フィルムは生きている】手塚治虫
  https://diletanto.hateblo.jp/entry/2023/10/23/072601
手塚治虫【どろんこ先生】【ぐうたろう千一夜】
  https://diletanto.hateblo.jp/entry/2023/10/01/203426
手塚治虫新選組】(ネタバレ注意!)
  https://sfklubo.blog.jp/archives/21860861.html

【アンケート実施中です!ご協力お願いします!】
黒い色以外のパソコンを使いたいと思いますか?
  https://blog.with2.net/vote/v/?id=233333
あなたは速読ができますか?
  https://blog.with2.net/vote/v/?id=231449

      人気ブログランキング  人気ブログランキング  人気ブログランキング
         ↑人気blogランキングにご協力お願いします。m(_ _)m
         
↓また、ご意見ご感想・ブックマークなど頂けましたら励みになります。
 コメントやはてなスターもお待ちしております。m(_ _)m