仮想世界を細密に描写 「ネオ若冲」発表相次ぐ
■マンガが生んだ「すごい表現」
画面に一歩、また一歩と近づく度に、驚くほど精巧に描かれた細部が現れる。そんな細密な描写をする中堅、若手の画家たちの発表が相次いでいる。細部は写実的でリアルなのに、全体は非現実的な光景というのも特徴の一つ。それは、どこか江戸中期の「奇想の画家」伊藤若冲を思わせる。21世紀の「ネオ若冲」たちは、何を物語り、どこへゆくのか。 (大西若人)
2009年1月14日
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200901140121.html
池田学(35)
元田久治(35)
山口晃(39)
松井冬子
諏訪敦
篠原愛さん(24)
らの名が挙げられて紹介されている。
SFものや劇画など、凝った描写のマンガやアニメに親しんだ世代が、その延長上で細密な表現をし始め、それをネットで発見した人たちが画像を拡大して楽しみ始めた。これが山下(日本美術史家・山下裕二)さんの見立てだ。
(略)
マンガと現代美術といえば村上隆さん(46)が先駆的存在だが、国立国際美術館長の建畠晢さんは、「村上さんが挑発的にマンガ表現を使ったのとは違い、ごく自然な彼らなりのリアリティーとして細密に表現している」と見る。「シュールレアリスム(超現実主義)にも通じる幻想表現だが、それはマンガなどの虚構から得た仮想的世界観をリアルに描いた結果で、超現実主義のような現実世界に対するアンチではないだろう」
意識の薄そうな表情や廃虚の静けさには強いメッセージ性はうかがえない、としつつ、「しかし、そのニュートラルな脱力感が、テロや不況といったささくれだった世界から距離を置くという批評性も帯びている」と分析する。
美術評論家の中村英樹さんも「宗教戦争が続いた16世紀欧州で残った画家が、細密に描くブリューゲル。彼の描く人物も目がうつろ」と指摘。では現代の細密画はブリューゲルになれるのか。「自分中心のミクロな視線だけでは難しい。ブリューゲルの『バベルの塔』には、ちゃんとミクロとマクロの視線がある」
描く側でも、山口さんは「電話しながら描く落書きのようにはしたくない。大きく文化を見る姿勢が問われるのでは」と話すのだ。
山下さんは「ただ細密に描くだけの作品は、苦々しく思う」と話しつつ、こう期待を語る。「かつての日本美術に見られた、技術とニュアンスが併存する表現につながる劇薬として機能するなら、楽しみだ」
ネオ若冲たちは、マンガ、アニメ、ネット時代の意識を担いつつ、よくできた落書きで終わってしまうのか。それとも、未来のブリューゲルや若冲になれるのだろうか。
恥ずかしながらこのような絵についての潮流は全く知らなかった。
ネットをする人の間では新聞を購読しない人が増えているようだが、このような記事を読むと、私には新聞は世間への見聞を広める大切なものだと思う。
特に文化関係の話題はありがたい。
この記事を読んで思い出したのは、吉田初三郎にも通じるものがあるのではないかということ。
■[日々の冒険]吉田初三郎のパノラマ地図
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20071024/p1
■[日々の冒険][堺]パノラマ地図でたどる近代の名所
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20080217/p1
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