先日、『小僧の神様』『清兵衛と瓢箪』『城の崎にて』の朗読CDを聴きました。
サウンド文学館●パルナス8
◆『小僧の神様』~志賀直哉の神様劇場~
https://diletanto.hateblo.jp/entry/2025/05/20/062438
それに関して、講談社青い鳥文庫に入っている志賀直哉の作品集を図書館から借りてきました。
上に挙げた三作品も当然入っていました。その他の作品について感想を覚え書きしておきます。
【菜の花と小娘】
執筆されたのは処女作「網走まで」より早く、直哉自身が「別の意味で処女作と云ってもいいかも知れない」と書いているらしい。後年、私小説を多く書く直哉だがこの頃は童話のような作品を書いていたようですね。
菜の花と会話したり川の流れに流される菜の花に合わせて走るなど、ファンタジー的な描写。
【母の死と新しい母】
当時は子どもを産むのは命がけだったんですね。命がけで子どもを産み育ててくれた母親達に感謝。それに比べて男のリスクは小さい。
【或る朝】
祖父の三回忌の日の朝の出来事。反抗期の心情を描いているのでしょうか。
主人公は「信太郎」という名。一つ前の「母の死と新しい母」の語り手「わたし」の優等生的なタイプとはえらい違いです。
【網走まで】
「自分」が電車の中で遭遇した、網走まで行くという親子について書いた小説。
一体この親子は何で網走まで行くのでしょうか。今のように新幹線や飛行機のない時代に大変な旅路です。易経に言う「火山旅」の旅です。
しかしこれだけ記述して、後でこの母親がこの小説を読んで「私のことだ」と思わなかったのでしょうか。モデル料よこせと言ってきたりして。個人情報が言われる現在では書けない小説ではないでしょうか。
札幌南高13期東京同期会
面白かった本:『網走まで』志賀直哉
https://minami13.blog.fc2.com/blog-entry-1843.html
緑陽ギター日記
志賀直哉著「網走まで」を読む
https://blog.goo.ne.jp/ryokuyoh/e/c2740eda16c47d43d0a9d89e4024cd39
【正義派】
列車事故を見て会社側に立つか正直に証言するか板挟みになる労働者の話。
最初は興奮して正義感から元気に主張していたのに段々心細くなっていく描写が実感できます。他人事ではなく私もいつこんな立場に立たされるか分かりません。
唐突に終わりますが、ここからは読者が考えろという問題提起でしょう。
エンタメ作品ならハッピーエンドに終わるでしょう。文学的作品はアンチハッピーエンドに終わることが多いというイメージが多いのすが、どうでしょうか?
志賀直哉『正義派』解説|真実を告げる勇気と、揺れ動く感情。
https://necojara.com/siganaoya-seigiha/
東京大学文学研究会公式ブログ
志賀直哉『正義派』読書会
http://blog.livedoor.jp/bunken_u_tokyo/archives/1788274.html
松竹 作品データベース 正義派
https://www.shochiku.co.jp/cinema/database/03063/
文学はハッピーエンドでは終わらない?
https://diletanto.hateblo.jp/entry/20070423/p1
【真鶴】
法界節の一行を追いかけて遠くまで行ってしまう兄弟というか兄。
志賀直哉版『トロッコ』。
【クマ】
行方不明になった愛犬・クマを偶然発見して追いかけて捕まえる。全ては偶然の賜物。
『城の崎にて』のイモリと逆パターンの幸運。これも志賀直哉の偶然の神様劇場。
それにしても犬を追いかけて走るとは、直哉先生の大活躍。
【百舌】
矢島柳堂先生がかかわった百舌鳥の親子との出来事。
解説によると、直哉には画家の矢島柳堂先生を主人公とした一連の連作があるそうです。
柳堂先生は志賀先生の理想像なんでしょうか。私にとっても理想の生活です。
矢島柳堂先生シリーズを全作品読んでみたい。
【宿かりの死】
【山の木と大鋸】
ここに登場するヤドカリと山の木は共に成長して大きく強くなっていきます。
しかしその顛末は対照的です。
身体の成長だけではなく心の成長も必要なのです。
そして山の木とその隣の友人の木との運命を分けたのは偶然です。
生きていくには運も必要なのです。
【玄人素人】
再び愛犬・クマが登場。
直哉は動物が好きで色々飼ったようです。
やはりヘビの類いは悪役になりますね。これは哺乳類たる人間として仕方のない本能です。
以上、志賀直哉の短編集。なかなか読みやすいいい作品集だったと思います。
私は小学校3年か4年の頃、ポプラ社の子ども向き日本文学シリーズの『小僧の神様』を読んだことあります。
子ども向きとはいえ字が細かくて2段組で相当骨のある構成でした。『小僧の神様』や『清兵衛と瓢箪』は読みやすくて面白いと思ったのですが、『大津順吉』だとか『和解』は子ども向けとしては重厚過ぎるテーマで、相当苦労して読んだという記憶があります。
今の時代は情報量が多くて他にも色々やることはあるので、今の時代の小学生が無理に『大津順吉』や『和解』を読む必要はないと思います。ということでこの青い鳥文庫版の『小僧の神様』は読みやすい短編小説中心の編集なので、小学生にも大人にとっても志賀文学入門書として素晴らしいと思います。
この青い鳥文庫版、巻末解説は児童文学者の藤田のぼるさんが書かれています。わずか6ページですが内容が凝縮されていて素晴らしい解説だと思います。
「おもに自分自身の体験や思いを作品の素材とした直哉ですが、けっして自分の感情や好ききらいにおぼれることなく、自分自身をも含めて客観的な目で描ききるところに、彼の文学の真価がありました。それはちょうど、画家が自身の顔を克明にデッサンする様を思わせます。こうしたところから、志賀直哉は理性の作家、さらには「小説の神様」(なんだか、「小僧の神様」に似ていますが)とさえ呼ばれ……」
……と、以下、収録作品の幾つかについて作品の背景やポイントが簡潔に述べられていますが、もう少しページ数を増やして全ての収録作品の充実した解説をして頂きたかったと思います。
また、この青い鳥文庫版は挿絵がユーモラスで味があるタッチです。井上正治という方が描いています。検索すると同姓同名の漫画家の方が出てきますが、本書の挿絵の方はあまり出てきません。はてなブログタグでは「井上正治」さんは3名登録されていて、一番上に「絵本作家。」として登録されているのがこの方でしょう。
(なお、本書の画家紹介によると、井上正治さんは1939年の北海道生まれだそうです)
志賀直哉の作品には「わたし」が身辺に起こったことや思ったことを書く「私小説」が多い。小学生時代に志賀直哉の短編小説に親しむと作文が得意になるのではないでしょうか。
ところで、「私小説」と「エッセイ」は違うのでしょうか。どう区別するのでしょうか。
●ブクログ
https://booklog.jp/item/1/4061473778
https://booklog.jp/item/1/4591000206
●読書メーター
https://bookmeter.com/books/270284
https://bookmeter.com/books/2901637
[wikipedia:私小説]
[wikipedia:随筆]
さびしさを受け入れる――『ちくま日本文学021 志賀直哉』
https://cafedenowhere.hatenablog.com/entry/2019/10/07/223939
↑
「クローディアスの日記」「矢島柳堂」は早急に読みたいと思った
ポプラ社 アイドル・ブックス(全60巻)
(51)小僧の神様
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/0400051.html
↑
ポプラ社のアイドル・ブックス全60巻のうち51巻目。
私が買ってもらったのは全40巻のうち21巻目だった。
版が変わって巻構成も変わったのだろう。
なお私が高校生の頃、41巻目以降に『青い山脈』などの石坂洋次郎作品が追加されました。
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