OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

うらなり先生の見た坊っちゃん


 
 昭和9年、銀座四丁目で古賀先生(うらなり)は堀田先生(山嵐)と再会する。
 カフェでお互いのその後や近況を交換し、古賀先生は帰宅後、寝る前に今までの人生を振り返る。
 うらなり先生の視点から見たもう一つの「坊っちゃん」。
 
 夏目漱石の「坊っちゃん」を読むと、私はつくづくうらなり先生だなと思います。

■[名作文学]【百年読書会】『坊っちゃん』その後おれはうらなりになった
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20090709/p1


 うらなり先生が語り手となってうらなり先生のその後が描かれているという小説があると知り、私が語り手とはどういうことだろう、私はその後どうなったんだろう、と興味深く思い、読んでみました。
 本作品では、「坊っちゃん」に描かれた事件が、うらなり先生や山嵐先生の視点から語られています。
 うらなり先生から見ると、坊っちゃんの行動が理解不能のようです。

「男には人の心に土足で入ってくるようなところがあった。」
「自分の考えや行動はよろず正しいと思っているらしいのが私とは合わなかった。合わないというよりも迷惑である。」

……というような記述が度々繰り返されています。
(そういえば、「坊っちゃん」先生も名前はないんですね。
 本作品ではうらなり先生命名による「五分刈り」などというあだ名で呼ばれています。)

「五分刈りのあり方というか、発想が依然としてわからない。私に対して一貫して同情的だった理由もわからぬ。」

と、赤シャツや野だいこ以上に坊っちゃんに対して辛辣な書き方が目立ちます。
 そのような記述を見ると、やはり私はうらなり先生ではないようです。
 もし私が回想するならば、いつまでも狸や赤シャツや野だいこに対する恨み辛みを忘れずに書きたてるだろうし、一方、それらに敵対していた山嵐坊っちゃんを持ち上げるでしょう。
 私がもし当時の愛媛の学校の教師として赴任したとすると、やはり古賀先生に同情して堀田先生に加勢し、教頭や吉川先生と対立していたでしょう。坊っちゃん先生そのまんまです。
 私にとっては、本作品のうらなり先生の発想の方が分かりません。
 というと、私は、外から見えるタイプはうらなり先生で、頭の中は坊っちゃんということです。
 理想(思うこと)に現実(行動)が伴わないという、一番ストレスが溜まる組み合わせです。
 
 ところで、坊ちゃん先生のその後はどうなったことになっているのでしょうか。
 堀田先生は現在、東京在住ということですが、その堀田先生とも音信不通のようです。

「東京に帰ってから、街鉄の技手になり、それから技師になったという噂もあったが、本当のところはわからない。それよりも、関東大震災を生きのびたかどうか」

■[日々の哲学]『うらなり』で考える日本人の国民性
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150405/p1
■[名作文学]【百年読書会】『坊っちゃん』その後おれはうらなりになった
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20090709/p1
■[名作文学]朝日新聞再掲 夏目漱石「こころ」を読んで
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20140925/p1
贋作『坊っちゃん』殺人事件 の暗澹
  https://diletanto.hateblo.jp/entry/20140207/p1


少年少女・ネタバレsalono(ネタバレ注意!)
 贋作『坊っちゃん』殺人事件 ネタバレ検討会
  https://sfklubo.blog.jp/archives/12884334.html
 四国・坊っちゃん列車殺人号 ネタバレ感想会
  https://sfklubo.blog.jp/archives/12884337.html


 wikipedia:うらなり wikipedia:小林信彦 wikipedia:坊つちやん


惨憺たるアンコウ 小林信彦「うらなり」
  http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/blog-entry-1161.html
フィロビブロン 『うらなり』(小林信彦) 文春文庫 
  http://blogs.yahoo.co.jp/tomo31841211/14983672.html
小林信彦ファンのページ うらなり
  http://www.geocities.co.jp/Bookend/5077/2006-06.htm
断想集〈不在〉によって〈存在〉を示す人物 小林信彦『うらなり』
  http://members.jcom.home.ne.jp/burari/essay/e582.html
漱石を訪ねる)なぜ「うらなり君」の左遷先に
  http://digital.asahi.com/articles/ASGCT66MKGCTTNAB012.html


ブクログ
  http://booklog.jp/item/1/416725624X
  http://booklog.jp/item/1/4163249508
読書ログ
  http://www.dokusho-log.com/b/416725624X/
  http://www.dokusho-log.com/b/4163249508/
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