OLDIES 三丁目のブログ

森羅万象・魑魅魍魎を楽しみ・考える不定期連載ウェブログです。本日ものんびり開店休業中。

31古典文学

黄金仮面 江戸川乱歩の最高傑作

著者の江戸川乱歩自身が 「明かるいものをと心がけ、変態心理などは持ち出さないことにした。」 「この作は私の長篇小説の中でも、最も不健全性の少ない、明かるい作といえるのではないかと思う。」 と書かれています。 私もあまり猟奇的なのは苦手です。 そ…

朝日新聞再掲 夏目漱石「こころ」を読んで

朝日新聞で連載中の夏目漱石「こころ」が本日最終回を迎えました。 新聞連載という形で少しづつ再読する、いい機会となりました。 夏目漱石「こころ」 先生の遺書(百十) - 朝日新聞デジタル http://t.asahi.com/fwvo (反響編)夏目漱石「こころ」再連載に…

ヴィヨンの妻 大谷は嫌いだ

ヴィヨンの妻 私はこの小説に登場する詩人・大谷のような人物は大嫌いだ。 最後の方で登場する、詩を描いているという若い工員のような人物も大嫌いである。 ついでに言うと、『斜陽』に登場する直治や上原、『人間失格』に登場する大庭葉蔵のような人物も大…

新釈 山月記 他四篇

新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1) 【藪の中】 大学の映画サークルの作成から上映までを色々な視点で描く。 よく考えれば、世の中、このような思い違いが結構あるではないでしょうか。 自分がもし「藪の中」を描くとすれば、どのような事件をどう…

パリの怪盗・黒い星

『パリの怪盗』 マッカレー原作 朝島靖之助・訳 白井哲・絵 (偕成社版 少年少女 世界の名作29) 昭和47年 重版 (あらすじ) 黒い星!それはパリを騒がす天下の大怪盗。 影のごとく現れ、煙のごとく消え去る怪盗。 決して殺人はしないが、蛇のように悪賢…

阿Q正伝 松枝茂夫訳 旺文社文庫版の特長

少年少女のために訳された魯迅『阿Q正伝』とはどんなもんだろうか、と好奇心に駆られて、少年少女向け版と一般向け翻訳を読み比べてみました。 ■[名作文学]少年少女向け阿Q正伝 http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20131101/p1 一般向け翻訳は、松枝茂夫訳の旺…

阿Q安倍Q竹Q山Q、QQQ……

『阿Q正伝』の主人公・阿Qというのは誉められた人物ではなく、嫌な人間なのですが、聖人君子でない限り、多かれ少なかれ誰にでもこういった面はあるものです。 確かに魯迅は中国の人々に覚醒を促すため、あえて鋭い警世の書を記しました。 これをあの時代の…

少年少女向け阿Q正伝

魯迅の『阿Q正伝』は風刺小説として、行間まで読みこなすのはなかなか難解な小説ではないでしょうか。 ところが日本でもかつて少年少女向けに紹介されていたというから驚きです。 カラー名作 少年少女世界の文学(全30巻)(小学館) 第25巻 東洋編2 (19…

ブック・アサヒ・コム「マイ本棚」

ブック・アサヒ・コムで、ブクログの何世代も前のような「マイ本棚」というサービスがあります。 ブクログの方が洗練されて便利なのですが、感想メモをブック・アサヒ・コムにリンクできるというところに旨味があります。 早速作成してみました。 荒馬紹介の…

『クオレ』に「焼きりんご」の話はあったのか?

アミーチスの「クオレ」というと、「まんが世界昔ばなし」で「クオレ物語 難破船」を見たのが最初か? 最後、主人公の男の子がぐるぐる回りながら沈んでいって、すごく怖かった。 原作を読んだのは、中学1または2年生の頃。旺文社文庫の全訳版で。 元来、…

(リレーおぴにおん)没後80年・賢治を語ろう

【(リレーおぴにおん)没後80年・賢治を語ろう:1 声優・桑島法子さん】 この声優さんのお父上もすごい方だと分かった。 そういった家庭環境の中で育ってきたから現在があるのだろう。 http://t.asahi.com/bufm wikipedia:原体剣舞連 【(リレーおぴにお…

『三銃士』について思うこと

アレクサンドル・デュマ『三銃士』を再読しました。 さすがに完訳版で読む余裕がないので、手っ取り早くヤングアダルト向けの抄訳版で。 前回、小学館・少年少女世界の名作文学(全50巻)版で読んだのですが、原作が長いだけに、どこを取捨選択するかで違…

ゼンダ城の虜 次世代に継承を

『ゼンダ城の虜』 偕成社 少年少女世界の名作64(100巻版) 柴田錬三郎・訳 池田かずお*1絵 1970年7月25日 発行 欧米では「ルリタニアン・ロマンス」というジャンルが存在するほどの著名な冒険名作の古典のようです。 私が小学生だった頃は、児童向け作品と…

小学生がスティーヴン・クレイン『怪物』を読んでいた!

少年少女世界の名作文学18 アメリカ編9(小学館)に、スティーブン・クレイン『怪物』が収録されていました。 『怪物』 スティーブン・クレイン原作 及川甚喜(文) 古賀亜十夫(絵) (小学館 少年少女世界の名作文学18 アメリカ編9 に収録) 1968年8…

小学生がモリエールを読んでいた!

『黄色のへや』を読むために借りた本にモリエール短編集として、『タルチュフ』『町人貴族』が掲載されていました。 小学館 少年少女世界の名作文学26 フランス編8 モリエール短編集 タルチュフ 町人貴族 モリエール原作 后藤有一(文) 霜野二一彦(絵)…

ジュブナイル版 黒岩涙香『幽霊塔』(森いたる『ゆうれい塔』)

(ネタばらし注意!) (あらすじ) ロンドン郊外に丸部氏が建てた時計塔。 莫大な財宝を隠す秘密の倉庫を兼ねていたのであるが、丸部氏は塔内で遭難死。 その後塔を買い取った輪田お紺は養女・夏子に殺害され、夏子は刑務所で狂い死んだ。 丸部氏の血筋をひ…

怪盗ファントマ(ネタばらし注意!)

怪盗ファントマシリーズは、フランスの人気シリーズで、42作も書き継がれ、何度も映画化されているといいます。 そのような名作シリーズが埋もれていたとは。 少年少女対象ながらこういった作品を収録したとは、何と素晴らしい名作全集でしょう。 小学館 …

ジュブナイル版 黒岩涙香『死美人』

(あらすじ) トランクの中から美人の死体が発見された。死体の胸にはナイフが刺さり、ナイフの根本にはスペードのクイーンのトランプ札が。 トランクを運んでいた容疑者は耳が聞こえず、話すことができない。 警察本部長はかつて名探偵と言われていたレコッ…

世界推理小説大系第2巻 ガボリオ 永井郁・訳 東都書房

世界推理小説大系〈第2〉E.ガボリオ (1964年) 永井郁(訳) 東都書房 240頁 1964年6月30日第1刷 ガボリオのルコック探偵について検索していたら、このような本が出てきました。 忘れられた存在になりつつある、数少ない日本でのルコック探偵翻訳作品史の中…

ルコック探偵尾行命令(ネタばれ注意!)

(あらすじ) パリの裏町の酒場で起こった殺人事件。 3人を殺害した男が現行犯で逮捕される。 何か裏がありそうな事件であるが、犯人は何かを隠して多くを語らない。 ルコック探偵と謎の囚人・メイとの追いつ追われつの知恵比べが始まる! いや〜これは傑作…

ルコック探偵 河畔の悲劇(オルシヴァルの犯罪)

トレモレル伯爵の屋敷近くの河畔で伯爵夫人の惨殺死体が発見された。 伯爵の屋敷は荒らされ、伯爵は行方不明に。 オルシバル警察署長のプランタはパリ警視庁から、フランス警察始まって以来の名探偵と言われるルコックを呼び寄せる……。 地元警察のドミニ刑事…

名作文学メルマガ久々の発行です

□/■/□/ 少年少女世界の名作文学ブログ・速読み版 /□/■/ ■/□/ メルマガ: http://nazede.gozaru.jp/mmm.html /□/ ウェブログ: http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20040404 ■/ 第19回配本 お久しぶりです 『三銃士』読みました / ゜・*:.。. 。.:…

三銃士 その後の展開が気になる

↑少年少女向け完訳版。偕成社文庫版は角川文庫版と同じなのでしょうか? 『三銃士』 誰もが耳にしたことあるデュマ『三銃士』。読んだことありますか? 私はなぜか本も映画もアニメも人形劇も今まで全く縁がなく、40にして初めて原作(少年少女向け翻訳版…

川上弘美『七夜物語』残っている謎

朝日新聞朝刊で連載されていた川上弘美『七夜物語』が5月5日でついに完結。 1年以上も連載していたことになるのか。ずっと拝読させて頂いていて面白かった。もっともっと続いていてほしかった。 内容は充実していたのう。児童名作文学の古典となるんじゃ…

体育会系女流作家に圧倒された

NHK短歌の5月1日の放送。 いはばしる垂水の上の早蕨の 萌え出づる春になりにけるかも ゲストの田口ランディさんが紹介された歌。 中学で習った時、衝撃を受けたという。 「萌え出づる春になりにけるかも」 というフレーズに覚えがあるようなないような。 検…

川上弘美「七夜物語 ななよものがたり」1977年日本のアリス

現在朝日新聞で連載中の川上弘美「七夜物語」が面白い。 新聞の連載小説を読むのは本当に久しぶりで、今までも数えるほどしか読んだことない。 今回の連載は、連載前の紹介記事を読んで興味をひかれて試しに読み始めたのだが、そのまま読み続けることになっ…

【百年読書会】『坊っちゃん』その後おれはうらなりになった

百年読書会に参加するつもりが、読書とブログにかけられる時間が少なくなり、先月の『あ・うん』は時間切れで参加できず。 今月の『坊っちゃん』は何が何でも参加するんだと強行日程で参加させて頂きます。 本作品は単純に見ると、恋愛の三角関係が核にあり…

【百年読書会】深沢七郎『楢山節考』 今後再び人類が直面する現実か

さる新聞の日曜読書欄で開催中の【百年読書会】、5月のテーマは深沢七郎『楢山節考』である。 『斜陽』もそうだったが、子どもからお年寄りまで一家団欒で読める人畜無害な作品というより、少々アダルトでブラックな選定ではないか? 結構クセのあるテーマ…

“百年読書会”始まる 4月は太宰治『斜陽』

さる新聞の日曜読書面で“百年読書会”が始まった。 (詳細については こちらのページ で) すでに400通ほどの投書が集まっているという。 どんな風に展開されるかと楽しみにしていたが、スペース的にはそんなに大きくない。 筒井康隆の新連載より小さいスペー…

“1億総斜陽族時代”たる現代日本にて『斜陽』を読む

さる新聞の日曜読書面で、4月から「百年読書会」なるコーナーが始まるという。 ナビゲーターとして重松清を迎え、時代を超えて読みつがれる名作を読者とともに毎月1冊ずつ読んでいくという。 その第一弾が太宰治『斜陽』ということで、投稿募集が始まってい…